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2005年03月12日() 旧暦 [n年日記]

[必殺] 東海道五十三次殺し旅 庄野

 現在テレビ東京系昼に放映中の「新必殺からくり人」第十一話。
 庄野の絵を火にかざすと、男の持つ「竹之内」の字が書かれた傘が赤く染まる。庄野の本陣 *1 の竹之内は広重が滞在した際、一方ならぬ世話になっており、なにかトラブルに巻き込まれたようであり、なにか起こっていたら助けてやってくれ、というのだ。
 広重の懸念は当たり、竹之内の主人は行方不明。傾きかけた本陣を一人娘のおるいと爺やの嘉平がなんとか支えていた。本陣の権利を奪おうと画策する脇本陣 *2 の村田屋からの金を用立てるとの申し出も断り続けていた。
 おるいが許婚の巳之助に相談に来るが、巳之助はお艶たちが泊まった旅籠の番頭。それがきっかけでお艶たちは力を貸そうと奔走する。
 そんな中、嘉平は亀山で金策に成功するが、金を持って庄野に帰る道中で殺され、金を奪われてしまう。金が用意できないばかりか嘉平まで失ってなお気丈に本陣を守ろうとするおるい。しかしこればかりはなんともしようもなく、恋人の巳之助に促され、やむなく村田屋に金を借りに行くことに。しかし、金の代わりにとばかりにおるいはその場で村田屋に汚される。その場にやって来た巳之助は事の後を目撃し、愕然とする。
 おるいから身を任せてきた、という村田屋の言葉に、おるいの事がもう信じられないと別れを告げる巳之助。だが実は巳之助は村田屋とつるんでおり、全てはおるいを絶望に突き落とす為に仕組んだ罠だった。
 だがそんなことと知らないおるいは絶望して川に身を投げるが、すんでのところで蘭兵衛が助ける。

 本陣を女手ひとつで守る娘を、本陣株を狙って悪党が悪事を働く、というパターンなのだけど、これをこれまでもというほど苛め抜き、最後には信頼していた恋人の裏切りまで露呈してしまう。うひゃー、ここまでやるか?
 特に巳之助役の三ツ木清隆の好青年ぶりには最後まで騙される。手が込みすぎてる気がするが、そこから仕置に転じるカタルシスはかなりのもの。
 村田屋清兵ヱ役の神田隆、嘉平役の市川男女之助(おめのすけ)など、脇の役者も話を引き締めており、派手なところはないが見ごたえたっぷり。
*1: 大名の参勤交代や役人等が利用する定宿。利用する大名から下される下され金などで運営していたが、運営が苦しいことも多かった。
*2: 本陣だけで事足りない場合に使用する予備の本陣

[必殺] 五十三次殺し旅順路

 一応、新必殺からくり人の辿った道筋をまとめておく。つっても道は東海道に決まってるからどこで殺しをしたか、ってことですが。参考: 東海道五十三次をゆく
日本橋(#1) →品川→川崎→神奈川→保土ヶ谷→ 戸塚(#2) →藤沢→平塚→大磯→小田原→箱根→ 三島(#3) →沼津→ 原(宿)(#4) →吉原→蒲原→由比→興津→江尻→ 府中(#5) →丸子→岡部→藤枝→島田→金谷→ 日坂(#6) →掛川→袋井→見付→浜松→舞阪→ 新井(#7) →白須賀→二川→吉田→御油→赤坂→ 藤川(#8) →岡崎→池鯉鮒→ 鳴海(#9) →宮→ 桑名(#10) →四日市→石薬師→ 庄野(#11) →亀山→関→坂下→土山→水口→石部→草津→ 大津(#12) 京都(#13)
 「五十三次」と言いつつ55箇所だけど、出発点の江戸日本橋から到着点の京都三条大橋までの間の宿が53ヶ所、ということ。この53ヶ所は幕府の公文書などを届ける早馬の中継点でもあり、箱根など農耕ができず旅客の落とすわずかな金銭が生活の主な糧である場所などは、幕府が維持のために優遇装置などもしたという。
 当時の移動手段は庶民は当然徒歩が主流で、日本橋から三条大橋まではおよそ二週間ほどだったという。だから一回の旅で全部の宿場に泊まったわけではなく、飛ばし飛ばしに旅をしたわけですな。ただ天保太夫一座は興行しながらの旅なので、おそらくそれよりは大分かかっていると思われる。また大八車を押しながらなので、泊まってる宿場も多めだろう。
 また、食事付の宿に泊まるというのはわりかし贅沢なことで、木賃宿 *3 で自炊しながら旅をする者も多かった。旅費は結構かかり(一説では3〜4両)、さすがにお伊勢参りや京都への旅は一生でそうしょっちゅう行くものではなかったようだが、それでも関東や伊豆などの比較的近場への旅行は多かったらしい。
 旅費の問題でもう一つ出てくるのが持ち運びのこと。小判は日常で使うような貨幣ではなく、使うにしても両替商などで両替してもらう必要がある。また、あまりに金を持っていると盗難の危険が高くなる、ということで、節約もかねて江戸から役者絵などを持っていき、それを地元の人に米や野菜と交換してもらったりもしたようだ。地元の人たちもそういったもので江戸への憧れを募らせていた。
 東海道というと広重の「東海道五十三次」だが、広重以外にも多くが絵の題材にしている。また、文学の方で言うと十返舎一九の「東海道中膝栗毛」だが、江戸庶民の旅心をくすぐり大ヒット、と言っても当時は大量に製本する印刷技術がなく、多くは貸本である。庶民が娯楽として本を読んでいたということは識字率の高さの反映でもあり、またこれが十返舎一九が世界最初の職業作家として文筆業のみで収入を得て生活できた背景になる。
 「東海道」というキーワード一つで、結構江戸時代の風物が出てくるものだ。
*3: 食事を出さない宿。木賃とは自炊の為の薪を売るので、そのことを指している。

[その他] ライブドアとか

 結局、ニッポン放送のフジテレビへの株優先販売は差し押さえになったそうで。そんなんありなのかなぁ、とか思ってたらやっぱり「あかん」ということのよう。
 しかし、「ライブドアはニッポン放送を傘下に治める」ことはできるかもしれないが、結局フジテレビへの影響は絶たれるだろう」とは、みんなが思っているらしい。リーマンブラザーズから800億を借り入れ、その上でニッポン放送だけ手にしても意味があるまいに。試合に勝つ可能性はあっても勝負は確実に負ける。唯一可能性が合ったのは電撃戦での勝利だけだったと思うのだけど……そうなると結局唯一の勝者はフジテレビでもニッポン放送でもなくリーマンブラザーズで、ライブドア自体が堀江社長の手から奪われるんじゃないかと。ニッポン放送に至ってはいずれにしても立つ瀬ないだろうなぁ。

  愛・蔵太さんのはてなダイアリー(3/11) でNYTのマツケンサンバ記事の記者についての話が。髷の違いへの無頓着さやゲイ文化に結び付けてる無理解さは、米国人だから仕方ないか、と思ったら、日本人かよ。いえ、署名をちゃんと見てなかった私が悪いんですが。まあ、細かい間違いとかはいいんですが、あきらかに明後日の方に記事を向かわせてしまう人に日本文化を海外に紹介して欲しくないなぁ、とか思ったり。

  人権擁護法案提出先送り 与謝野氏、調整に努力産経 )。う〜ん、まあ、明らかにいろいろ問題があるからなぁ。法案を出すなとは言いませんが、もうちょっとちゃんと考えて欲しい。


2005年03月13日() 旧暦 [n年日記]

[特撮] 軽く

  マジレンジャー は「お姉さんは心配性」。姉の芳香(ほうか)が弟の魁の恋路の手助けをするつもりが、ことごとく逆効果、というパターン。バカバカしいけど笑える。変身魔法を使ってあの手この手でちょっかいを出す芳香に意中の彼女とのいいところを邪魔されて、怒って追いかける魁。それを芳香はポストに化けてやり過ごそうとするけど、ピンクなのでバレバレ(芳香が変身するものはみんなピンク)。詰問されて「私はただのポストです〜」って……
  響鬼 はイブキが伊吹鬼に変身。それとその弟子のアキラ登場。伊吹鬼の変身は結構かっこいい。話自体は相変わらず眠いけど、これまでのマッタリ系登場人物とは違うアキラの登場で、少しは変わるかも。
 あ、来週「ウィンドトーカーズ」やるんだ。


2005年03月14日(月) 旧暦 [n年日記]

[必殺] 東海道五十三次殺し旅 大津

 現在テレビ東京系昼に放映中の「新必殺からくり人」第十二話。
 京都の手前の大津の宿に着いたお艶一行。殺し旅もあと二件というところで、泊まっていた宿に泥棒が入り、広重の絵を盗まれてしまう。大津でも仕事をするはずが手がかりの絵がなく途方に暮れる一同。ものがものだけに代官所においそれと届け出る事も出来ず、絵の探索と大津での悪事の探索を同時に行う事に。また、同じ泥棒に通行手形を盗まれた同宿のおしまも途方に暮れて代官所に通行手形の再発行を願い出るが、聞き届けられない。
 一方、盗まれた広重の絵は大津の代官服部の元に届けられていた。実は服部と絵を盗んだ捨吉の雇い主宗右衛門は裏でつるんでいて、大津を通過する女の中で上玉の客を選んではその通行手形を盗み、関を超えさせてやると持ちかけては女郎に売り飛ばしていたのだ。
 本当なら小駒の持っていた通行手形を盗むはずが錦絵を盗んで目玉を食らう捨吉。しかし絵を眺めていた服部が、庄野までの絵が皆一ヶ所どこか赤く染まっているのに気付き、不審に思う。絵師を呼び鑑定させても「なにか意味があって後から塗ったのだろう」ということしかわからない。だがひょんなことから火鉢にかざした大津の絵の、第八車に乗せた米俵が赤く染まる。宗右衛門らは米俵の中に女を隠して運んでいたのだ。
 庄野にもお艶一行が泊まったこと、そして本陣株を狙っていた脇本陣の主が何者かに殺されたことを知り、これは自分たちの殺人依頼だと気付く服部たち。
 かたやお艶たち一行も鑑定した絵師から盗まれた絵が代官所にあることを突き止め、また、大津で女の旅人の神隠しが頻発していることから、大津で行われている悪事の概要を知る。

 取りあえずもう使い終わった殺しの証拠の絵は処分しとけというツッコミは置いといて……
 殺人依頼の絵が盗まれてしまい、誰が標的なのかわからない上に、逆に悪人の手に渡ってしまい一行がピンチに。と、言っても先手を取られるとかいうこともないのでそんなにピンチという感じでもない。この辺をちょっと生かしきれてない気がするのは残念か。
 ただ、悪人の側とお艶たちの探索が平行して進んでいくのは見ていてなかなかスリリング。でも悪の側がそんなに強敵というわけでないので、最後はわりとあっさり。
 変化球なシナリオだけども、現在進行形の被害者もいて、一応絵を見て依頼の確認もしてるし、お約束のフォーマットは取り込んで全体的には無難にまとめている。
 ゲストは被害者のおしまに佐野アツ子。「助け人走る」で中山文十郎の妹しのでレギュラー出演していた。悪役には服部に石橋蓮司、宗右衛門に浜田寅彦、その手先の捨吉に江幡高志と、必殺悪役常連トリオ。この三人が一つの画面に納まってるシーンはむちゃくちゃ暑苦しい。(笑)
 小駒に顔を見られ、捨吉が宗右衛門に「まともに見られてはいやせん(から大丈夫)」と言い訳するが逆に「その変な面は一度見たら忘れるわけねえだろ」としかられるやりとりが笑える。通行手形と絵を間違えて盗むなんてのはあまりにあり得ないのだが、江幡高志ならありうるかも、と思えてしまうのがなんとも。「仕置屋稼業」の「とめてやめて」と言い、性格俳優(間違った意味の方)だなぁ、江幡高志。
 新必殺からくり人は明日の「京都」で最終回。第二話ぶりに早坂暁脚本で広重も久々に登場。
 ちなみに夜道を推して行けばよかった、という台詞が出る。確かに大津〜京都間は四里(12kmほど)だから強行軍できないわけではないが、ろくな明かりのない当時ではわりと無謀である。
 ところで主題歌「惜雪」を歌ってるのは西崎みどりと書いてしまったけど、みずきあいの間違い。ううむ。


2005年03月15日(火) 旧暦 [n年日記]

[必殺] 東海道五十三次殺し旅 京都

 今日までテレビ東京系昼に放映中だった「新必殺からくり人」最終回。
 ついに最後の仕事の場である京都についた天保太夫一座。しかし何故か京都の絵が二枚ある。一枚を火にかざすといつものように赤いあぶり出しが浮かび出ず、三条大橋が落ちたような絵に変わってしまった。不審に思いながらももう一枚を火にかざすと、今度は橋の上にたたずむ男が赤く染まる。
 橋の上の男は京都所司代の岡っ引き。京の入り口の三条大橋で怪しい人物に目を光らせているのだが、ただそれだけではないなにかがあると察し、探索を開始する。
 一座と同じ時期に、丁度座頭の佐市とお千代の父娘が京へやって来ていた。しかし二人はなにか酷く怯えている。実は二人は検校の位を貰いに京都所司代へ行こうとしていた。検校とは盲目の最高位。特に金貸しとしての権利が認められるため、座頭にとってはあこがれの位なのだ。しかし検校になるには千両という大金が要る。佐市は貧しい42人の座頭仲間が15年がかりで集めた金を預かり、仲間たちのために代表として検校の位を貰いに来ていた。
 そのことを聞きつけ、京都所司代の遣いと名乗る者が佐市を迎えに来る。お艶は不審に思い、蘭兵衛を公家の久我家へと向かわせる。久我家は検校位を授ける家系。この時期公家は皆困窮しており、久我家にとっては検校位の手数料は大事な収入源。しかし、検校の位を貰いに来た者はここ五年一人もいない、と言われる。実際には佐市を含め何人かがやってきていたのだが、所司代の代官斉藤に金を奪われた上で殺されていた。
 佐市は所司代に金を預け帰ってくるが、代わりに貰ってきた受取証はいい加減なもの。本来は無事に帰ることすらできないはずだったのが、遣いの者と一緒のところを小駒に見られたため、一旦無事に返してきたのだ。
 京都所司代のたくらみをお艶が聞かせるが、仲間たちの願いを背負っている佐市は死んでも検校を持って帰らねばならない、と悲痛な願いを訴える。
 翌日、京都所司代の遣いが佐市らを迎えに来る。罠を逆に利用するためにその誘いに乗る佐市。案の定、斉藤の手下らが佐市を殺そうと襲いかかる。そこに久我を連れてきた蘭兵衛とブラ平が駆けつけるが、佐市は一刀を浴びてしまう。のみならず、蘭兵衛が高野長英と気付いた手下の一人に逃げられる。
 久我から検校の位は授けられるが、長英を追う京都所司代の役人が市中を駆け巡る中、佐市はついに命を落としてしまう。
 このままでは仲間は皆、自分の巻き添えになってしまう。決心をした蘭兵衛は、ブラ平にある申し出をする……

 新必殺からくり人最終回。
 最終回としては少し盛り上がりに欠けるかもしれないが、話自体は良い出来。
 検校位の取得にかける親子の執念が話の縦糸。検校位は貰えたものの、その直後に絶命してしまう父親。その父親の意思を継ぐため娘が選んだ方法とは、 自らの目をつぶし、自らが盲目にしかなれない検校を江戸に持って帰ることだった。
 一方、蘭兵衛も仲間たちと別れ、また生き抜くためにブラ平の火で自らの顔を焼く。高野長英が追っ手から逃れるため顔を焼いたのは史実で(史実は薬品で焼いているのだけど)、実はブラ平の技の「火吹き」はこのために設定されていた。
 三条大橋が落ちる絵から広重の正体を察したお艶は、殺しの後金を貰う席で対決。お艶たちに渡したのとは別にもう一つ世間に出ない五十三次の絵があり、それは西国から反乱が起こったときにどのように防ぐかを記されたものだと看破する。落ちる三条大橋の絵は、敵が攻め上ってきたら橋を落とせという意味だったのだ。
 自らの正体を看破される広重はかつて幕府の隠密を努めていた事は認めるが、今は違う、と弁明する。それでも江戸で小屋に長英を追う役人が踏み込んできたのが広重の密告ではないかと疑うお艶は、そうであれば許せないと武器であるバチを手に広重を始末しようとする。
 しかし、広重は懐の矢立てからやおら筆を抜くと、そのお艶の姿を描き始める。
「お艶さん、一度あんたを書いてみたいと思ってたんだ……殺りたければどうぞ殺ってください。でも、できれば描き終わるまで待ってください」
 生命の危機を前にしても一心不乱に筆を走らせる広重の姿に、彼の真実を見たお艶はバチを収める。
 最後、お千代の姿を見て愕然とする一行。ただ無事を祈り彼女を見送るが、彼女が大八車に巻き込まれそうになったのを、遍路姿の男が庇う。その男が顔を上げると、顔を焼いた蘭兵衛だった……
 言葉も交わさず、視線で別れを告げる蘭兵衛とお艶一行。東海道五十三次殺し旅は、これで幕を下ろす。
 それまでのハイテンションなシリーズと比べるとテンションは落ちているものの、史実や土地土地の名物などを巧みに織り交ぜ(正確な考証はさておき)、見ごたえのあるシリーズである事は間違いない。


2005年03月16日(水) 旧暦 [n年日記]

[必殺] 一応補足

 検校位については こちらのサイト が詳しい。江戸時代期の公家が貧しいのはおおむね本当だが、官位を授ける家はわりとうるおっているところも多かったというから、久我家なども実際は存外そうかもしれない。
 また、金貸しは検校でなければできないわけではなかった。盲人の保護として他の権利と共に金貸しの権利が認められており、勝海舟の祖父の男谷検校も盲人から金貸しで身を起こした。当時の日本は世界でも稀有な事に盲人が自活する制度が整えられた国だった。
 まあ、この辺はあくまで余談ということで。

[その他] ぐりぐり動く!

  ウシガエル 。flash movieだけども超絶なまでに動きます。


2005年03月17日(木) 旧暦 [n年日記]

[必殺] 「新必殺からくり人」まとめ

 まあ、「新からくり人」の全話感想を書いたのはネット上で皆無だったから(&無視されるほど駄作ではないから)ってな理由だったんですが(多分「富嶽百景」はやらない)、 Umikazeさん新からくり人の総評を述べられてる ので、自分もちょこっと。
 コンセプト:からくり人シリーズの特徴「史実を背景に」を依頼人の広重、仲間の一人の高野長英ということでクリア。また、最初に広重が一括して依頼を行うことで依頼シーンなども省略している。もっとも大きな特徴は「旅」。これは「五十三次」というモチーフとあいまって成功している。ただし、「旅」以外のコンセプトは省力化という背景も見え隠れする。
 登場人物:重鎮にお艶、ブラ平、コメディリリーフに塩八、若い未熟なキャラとして小駒、正義感として蘭兵衛を配置。ただし塩八が半ばで退場し、また蘭兵衛もキャラとしては固く、感情移入しにくいのが難点か。反体制な逃亡者、という蘭兵衛の視点を随所に出せば、もっとシリーズの統一感が出たとも思える。
 殺陣:ケレン味が高い反面、わりともっさりした印象が強い。また、実質ほとんど蘭兵衛とブラ平がメインになってしまっている。ブラ平の火吹きは、悪党がのた打ち回るシーンが長いのでその分一瞬の爽快さに欠けてしまっている部分も。蘭兵衛の殺陣は流れるような勢い以外に特に特徴はないが、スタッフの演出がそれをカバーしてる部分も散見される。
 各話:各話ばらつきはあるものの、「見れないほどひどい」話もない(「桑名」は悪役の善兵衛の悪辣さがあまり出てないし、「鳴海」は意欲が空回りしてる感はあるが)。依頼シーンがないので話の自由度が高く、通常の時代劇に限りなく近い話もある。
 総評:過去の意欲的な挑戦作と比べると、「旅」以外わりと「特徴がないのが特徴」的な感じもする。その中でやはり「依頼が浮かび上がる絵」というアイデアは秀逸だろう。また、特徴がない、と言っても質が低いわけではなく、逆に丁寧な仕事ぶりが映える回も多い。模索の方向性がそれまでと違い安定性にあるように感じられるところや、また一つ前のシリーズの「新仕置人」が異様に印象的だったために損をしてる部分はあるが、その後の「旅物」の系譜などを考えても、必殺の転換期の作品の一つとして、重要な位置づけではあるだろう。
 ところで、メインタイトルは「新必殺からくり人」で各話サブタイトルが「東海道五十三次殺し旅 ○○」かと……

[必殺] あんたこの掠奪どう思う

 必殺仕業人第十七話。 DVD下巻
 定火消し *1 の竜神組は旗本の威光を嵩に着て、町火消しの邪魔はするわ町娘にちょっかいを出すわとやりたい放題。組頭・巳之吉の母親おふみも、バックについている五千石の旗本・乾に働きかけ積極的に悪事の揉み消しを図っている始末。
 そんな巳之吉に目をつけられた花火職人頭の娘おきよ。恋仲の花火職人・仙太と一緒にいるところを巳之吉らに襲われ、乱暴される。彼女の父親の松造は怒り、主水を通じてなんとかしてくれと頼む。
 主水は旧知の同心・安田を炊きつけることに成功するが、乾が町奉行を通じて横槍を入れ、さらにおふみに入れ知恵して松造を騙し、おきよを巳之助の嫁にするという念書を取ってしまう。無論、おふみ・巳之助にはそんなつもりは毛頭なく、訴訟を取り下げさせるための方便に過ぎない。
 許婚であれば乱暴狼藉にはならない。それをいいことに再度おきよを廃屋に連れ込んで乱暴する巳之助。念書の事を知った仙太は竜神組の屋敷に一人乗り込みおきよを取り戻そうとするが、乾により無礼討ちとして斬り殺される。
 おきよが廃屋で首を吊って死んだことを知った松造は自分の間違いを悔やみ、おふみが支度金と称しておいていった金で恨みを晴らしてくれと主水に頼むのだった……

 旗本の威光を嵩に着た連中の狼藉話なのだけど、これにバカ親がからんでくる。個人主義者の又右衛門でさえ半ば脅されるようにおふみにやいとを据えるために竜神組に連れ込まれ、「あたしゃあの親子見てるとムカムカしてくるんだ」と言わしめるほどのバカ親ぶりには確かに腹が立つ。
 被害者の側の仙太も、最初匕首で脅されてすごすご逃げ出すのはなんだ、と思わないではないけど、普通はそんなものかもしれないし、なんと言っても仕業人ですから。でもその事を後悔する仙太は、再びおきよがさらわれそうになると今度は必死で食いつき、終いには竜神組の本拠地に乗り込んで斬り殺されてしまう。
 仕業人的には露天で買ったところてんをはたきおとされて竜神組にからむお歌や、おきよが連れ込まれた廃屋が剣之介たちのねぐらで、戻ってみるとそこでおきよが首を吊ってるのがそれっぽいか。
 話的には中だるみの凡作だが、やはりスピーディな殺陣と美容に効果があるやいとだと言って又右衛門がおふみを仕留めた後、「もうこれ以上皺は増えねえ」と言い残していくところは胸がすく。
 しかし、松造がおふみから渡されたのは切り餅一つ分(25両)だけど、主水は五両しか取ってないような。なんだか微妙にフォーマットに拘りすぎの気もする。
 あと、この回からレギュラーだった主水の同僚の老同心・島忠介が、演じる美川陽一郎氏の体調不良により登場しなくなる。すさんだ雰囲気を和ませる(かつ、増幅させる)役割として重要だっただけに残念。
*1: 江戸には「大名火消し」「町火消し」そして旗本の構成する「定火消し」の三種類の火消しがいた。


2005年03月18日(金) 旧暦 [n年日記]

[その他] おっとびっくり

 なんでもライブドアがフジテレビ株買占めに3000億を用意してるそうで、どっからそんな金が? とびっくりしたら、乗っ取り予定の会社の資産を担保に金を借りる、という方法があるらしい。やっぱこっちの世界はよくわからんなぁ。
 と、思ったが、これって時代劇で思いっきりお店乗っ取りの悪役がやる手段じゃないのか? まあ、別に勧善懲悪の時代劇ってわけでも法律違反でもないし、フジが狙われたのもフジの脇が甘かったからなんだろうけども、堀江社長はなにをやりたいってのはやはりさっぱりわからない。それで面白い番組ができるならいいが、多分そうはならないだろうなぁ。

[必殺] あんたこの手口をどう思う

 必殺仕業人第十八話。 DVD下巻
 豊島屋出入りの飾り職人・甚作の作るかんざしは大変な人気。その甚作の弟子・定吉は露天で自作の飾り物を売っているがなかなか甚作からは認められない。甚作の娘のお京は彼に惚れていてかいがいしく世話をするが、そんな定吉を豊島屋の番頭の嘉七がなじみの芸者・お駒を抱かせ、仲間に抱き込んでしまう。
 嘉七が定吉にやらせたのは甚作の偽物作り。しかし、このことがばれて偽物をつかまされた客は豊島屋に押しかける。豊島屋の主人からどういうことかと詰問された甚作は、定吉しかこんなことは出来ないと思い当たり定吉を問い詰めるが、彼を庇うお京の口から彼女が定吉の子を身ごもっている事を知らされる。一人娘の幸せを何よりも願う甚作は定吉がお京と一緒になって幸せにするという約束で定吉の罪をかぶり、騙りの下手人として自首する。
 だが定吉は甚作との約束を反故にし、あっさりとお京を捨ててしまう。絶望したお京は大川に身を投げ自殺。死罪が決まった上そのことを知らされた甚作は「死んでも死に切れねえ」と主水に定吉の始末を依頼する。
 一方、豊島屋は大きく店の信用を落とした上20日の店閉めを言い渡され、事実上破産する。その残務整理中に、いきなり主人に襲いかかる嘉七。殴り殺した後、首を吊ったように見せかける。実は定吉に偽物を作らせたのもすべてこのため。わざと豊島屋を潰し、店の金を奪うための計画だったのだ。
 しかし奉行所も豊島屋の死因に疑いを持ち、嘉七の周りを探っている。主水たちは奉行所を出し抜いて、嘉七、定吉を狙う。

 乗っ取り話の変則と言えば変則か? 番頭になるまでにはかなりの年月と苦労があるだろうに、あぶく銭を掴むためにここまでするのはどうだろうという気もするが……
 また定吉も欲に流される小心者なんだけど、いまいち掘り下げ不足。もっと徹底的にどうしようもないダメ人間に描写しても良かった気も。
 その一方で大健闘するのは飾り職の甚作。頑固で誠実な老職人を演じていて、飾り職としてのプライドや自分自身までも捨てて願った娘の幸せがあっさりとふみにじられる。獄門に決まったと主水に知らされたときも達観しないで動揺しまくっている。だからこそ「せめて恨みを」という気持ちに共感する。
 今回の仕置は町方が動き回っているので剣之介ははずされる。その分、又右衛門が二人相手にする事に。仕事をはずされて「好きで休むわけじゃねえんだ」と主水に金を無心するシーンは本当に貧乏臭い。まあ、剣之介の場合はマジで死活問題ですから。
 又右衛門もむしろ頭脳労働型の悪党二人に大苦戦。いや、本当に弱いんですよ、やいとや。その前の腕立てうらない(?)で、数回と腕立て続けられなかったし。
 最後、いつもは「娑婆に比べりゃ牢屋の中は極楽」と言っている出戻り銀次が「甚作のとっつぁんみたいないい人が獄門だなんて、牢内は地獄だ」と主水にこぼす。もっとも、次回ではいつもどおり出戻ってくるんだけど。


2005年03月19日() 旧暦 [n年日記]

[必殺] あんたこの奥の手をどう思う

 必殺仕業人第十九話。 DVD下巻
 大店の美濃屋の女将・おときは、あちこちから金を借りまくっている。又右衛門も彼女に三両を貸していたが、一向に返してもらえる気配がない。ある事情から彼女は金を必要としていたが、美濃屋の主人はしまり屋で彼女の自由になるお金はほとんどない。そのための借金だったがそれももう限界に来ていた。
 一方江戸で評判の占い師・霊蝶は、マネージャーの嘉兵ヱと弥七に休みを貰う代わりやいとを据えてもらうことに。
 呼ばれた又右衛門は同じ上方出身ということもあって彼女に大いに気に入られ、翌日芝居見物に行く事を半ば無理矢理約束させられるが、嘉兵ヱが許さず、結局約束はすっぽかされてしまう。その夜、霊蝶が詫びにと酒と肴を持って現れる。陽気な霊蝶との酒に、又右衛門もまんざらでもなかった。
 だが翌日、おときがなにか吹っ切れたような表情で三両を返しに来る。なにか仔細ありと感じ話を聞くと、番頭との浮気の件で瓦版屋に強請られていたが、そのことは霊蝶しか知らないはずだという。「もうなんの心配もいらない」と言っておときは去るが、又右衛門の嫌な予感は的中、おときは番頭と一緒に川に身を投げてしまう。
 それを知った又右衛門は霊蝶のところへ行き彼女を問い詰めるが霊蝶には見覚えがない。すべては彼女の知らぬところで嘉兵ヱと弥七が由造と組んでしでかしたことだった。悪事を知った霊蝶は嘉兵ヱらに手を切ると宣言し去ろうとするが、その胸を弥七の匕首が刺し貫く。

 又右衛門が主役の話。話としては平凡だが、又右衛門と女たちの絡みが生きている。とくに霊蝶との関係は色事師又右衛門には珍しく大人のほのかな恋愛ムード。彼女のおかげでいつもの重苦しい雰囲気も全般的にやわらいでいる。だが、おときを追い詰めたのが霊蝶と誤解し彼女を罵倒してしまう。
 知らずに悪事に加担していた霊蝶だが、彼女自身は裏表のない好人物だっただけに怒り倍増。死の間際に霊蝶に渡された二両とおときから返された三両をあわせて仕事料にする。悪党自体はステレオタイプなので、仕置シーンはまあ普通。嘉兵ヱの仕置シーンでは霊蝶の後釜を仕込んでいる最中を襲うが、どう見てもエロ踊りを仕込んでるようにしか見えない……
 今回剣之介夫婦は冒頭で食い逃げ、さらに河岸を変えて大道芸をしているが、やっぱりあまり受けない。が、おひねりの中に何故か一朱銀が入っていて、逃げるようにその場を去るのは貧乏が身に染みているなぁ。

[必殺] あんたこの志をどう思う

 必殺仕業人第二十話。 DVD下巻
 奥州から剣で身を立てようと江戸へ出てきた小坂夫婦。希望へと目を輝かせる二人だが、偶然知り合った剣之介は「さっさと郷里に帰れ」と冷たい。しかし剣之介の懸念どおり、小坂が頼ろうとしていた同門の先輩は借金を踏み倒して逃げてしまった後で、道場はもぬけの殻。小坂はたちまち途方に暮れる。
 迷惑をしているのは借金を踏み倒された金貸しの吾兵衛も同じ。しかも懇意の同心神山から、近々奢侈禁止令が出る事を知らされる。妾に小間物屋を経営させていたが、奢侈禁止令が出れば店をたたむほかなく、莫大な損害になる。吾兵衛は在庫の始末に「内職詐欺」を思いつき、侍への意趣返しとばかりに小坂を騙し、その元締めに仕立て上げた。
 すぐに詐欺は露見し、ようやく騙されていたことを知った小坂は吾兵衛の家へ殴りこむが、吾兵衛と通じていた神山により捕縛、詐欺の首謀者として斬首される。
 夫が戻らないことを心配し剣之介に相談する小坂の妻・美緒。しかし、主水から小坂が死罪になった事を知らされる。さらに、それが悪党にたばかられた冤罪だと知り、主水たちの前で喉を突き、恨みを晴らす事を頼んで死んでいく。

 「内職詐欺」がテーマだけど、小坂が世間知らずなので大分「自業自得」の感はあるかも。剣之介も世の中がそんなに甘くないことを知っていてわざと冷たくあしらうのだけど、それが通じず、結局悪党に騙されて死んでしまう。
 美緒の清廉さと、死罪になる直前にも動じず、面紙も断った小坂のまっすぐさだけが救いというか……
 今井健二が第二話に続いて悪徳同心神山として登場してるけど(もちろん第二話とは別人)、上に書いたように自業自得の感が強いのであまりふてぶてしい悪という気がしない。むしろ主水相手に釣りの話をするところなど、かわいらしくすらある。
 一番の悪は本来金貸しの吾兵衛で、私欲の為に町人から金を巻き上げ、逆恨みの意趣返しに小坂夫婦をはめる。ここらへんの悪辣さをもっと出せてればもうちょっと盛り上がったかも。
 仕事は剣之介が持ち込んだ形で、剣之介は決まりどおり二両取るのだけど、主水が一両「こないだの貸しを返してもらう」と言って奪ってく。第十八話のあれ、あげたわけじゃなかったのね。剣之介は剣之介で「覚えてやがったのか」と踏み倒す気満々だし。さすが仕業人。
 でも吾兵衛をしとめた後、剣之介たちが彼が数えていた金に目もくれず立ち去るのは、ちょっと清廉すぎない? と思ったりもするのだけど。もっと金に汚くてもいいと思うのだけどなぁ。

[必殺] あんたこの計り事どう思う

 必殺仕業人第二十一話。 DVD下巻
 藤代屋の長男伸吉は女郎のおりくに入れあげ、店の金に手を出す不肖の息子。さすがに藤代屋はたまりかね、彼を勘当してしまう。実はおりくを使って彼から金を巻き上げていた岡引の弥七は、さらに金を巻き上げるために伸吉に彼の弟の孝助誘拐を持ちかける。
 伸吉を利用し孝助をまんまと誘拐した後、伸吉はアリバイ工作のためわざと微罪を犯し牢屋に。計画は完全かと思ったが、なんと誘拐犯が隠れた場所が捨三の洗い小屋。主水が一計を案じなんとか追い出すが、誘拐された子供の事が気がかりながらも面倒に巻き込まれてはと知らぬ顔を決め込む仕業人たち。
 一方、伸吉は牢から出た後、改心したふりをして藤代屋に頭を下げ、自分が孝吉の身代金を運ぶと申し出る。殊勝な伸吉の演技にまんまと騙された藤代屋は金を託すが、もとより伸吉と弥七はグル。ところが身代金の山分けをしようとしたところで、伸吉は弥七に刺される。弥七は最初から利用するだけしてから裏切るつもりだったのだ。
 結局なんだかんだと言って子供の事が気にかかっていた仕業人たちは誘拐犯の探索の途中、半死半生の伸吉を見つける。伸吉は虫の息の下で弟を助けてくれとやいとやに頼むのだった。

 ちょっと伸吉を誘拐に巻き込む理由が薄い。誘拐時にやりやすいってことは多少はあるだろうけど、これで安全性が高くなるわけじゃないし。するのだったら伸吉に全部の罪をなすりつけて始末する、って方が確実だと思うのだけど……
 でも、多分伸吉が改心して弟の身の安全を頼むというところが最も意図したところだろうし、そこは結構良かった。それだけにきちんとその部分のドラマ作りをしてくれれば……と思うのだけど。
 殺陣のシーンではやいとやが二人同時殺しをするのが見せ場。

[マンガ] SBR再開

 ウルトラジャンプ誌上でスティール・ボール・ランが再開。今回はプロローグ編ということで、ジャイロ・ツェペリがSBRに参加するきっかけを描く。
 過去のジョジョシリーズとの関連が云々されている今作だけど、ジャイロのいた国がイタリアの「ネアポリス王国」(ネアポリスは第五部の当初の舞台)というあたりや、ゾンビ馬が第六部の徐倫の能力をちょっと髣髴とさせるような。次号から本格連載。


2005年03月20日() 旧暦 [n年日記]

[必殺] あんたこの迷惑をどう思う

 必殺仕業人第二十二話。 DVD下巻
 伊達家家臣水谷弦之進の妻、水谷里江の始末が闇の口入屋藤兵ヱに依頼される。弦之進は伊達家が行っていた抜け荷の始末に、無実ながらその責を負って腹を切らされた家臣の内の一人なのだが、抜け荷の内情を実はよく知っており、そのことを知らされた妻の里江が江戸へ出奔したことからそこから秘密が漏れないよう口封じにという意図だった。特に弦之進の弟で里江の義弟・清二郎は武士の身分を捨て江戸へ出て瓦版屋をやっていた。万が一清二郎を頼り、風評であってもご公儀の膝元でそんな話が流れる事態は避けたい。その依頼を二千両で藤兵ヱは受ける。
 そんな晩、剣之介のねぐらに一人の男が逃げ込んでくる。男は剣之介に瓦版を預け、再び外へ。剣之介がその瓦版を見ると、伊達家の抜け荷の内情が記されていた。逃げ込んだ男こそが里江の弟の清二郎。持て余して剣之介は主水に相談するが、藤兵ヱがこの瓦版の揉み消しに動いていると察した主水は、瓦版を始末しろ、と剣之介に迫る。しかし、人から預かったものだ、と剣之介は断る。こんなものは見ただけで命が危ういと主水と又右衛門は縁切りまで言い出すほどの迷惑顔。
 しかし、剣之介の小屋は藤兵ヱに目をつけられる。そんな剣之介の小屋を、里江が訪れる。瓦版のことを訪ねる里江に、見張りに気付いている剣之介は知らぬ存ぜぬを通すが、里江に同情したお歌が預かった瓦版の隠し場所をつい教えてしまう。里江の様子から異変を感じた藤兵ヱの手下はお歌を拉致してしまう。主水と又右衛門は、拉致されたお歌が口を割る前に始末することを言い出す──

 巨大な黒幕との対決編。仕業人は闇の口入屋に睨まれ、お歌が捕まってしまう。犠牲者は里江とその義弟清二郎との関係を中心に話が進む。
 夫の無念を晴らそうと瓦版屋になってる清二郎をたよる里江だが、清二郎は里江に思慕を寄せており、兄の敵討ちよりも里江のために、命を懸ける。伊達藩の不始末を書いた瓦版を往来で撒こうものなら藤兵ヱの手下にたちまち見つかり、命はないことは確実。それを知った上で里江に黙って瓦版を撒きに出る清二郎。しかし案の定清治郎は殺される。清二郎の秘めた想いを知り、武士の妻というだけで敵を決意し、挙句清二郎を巻き込んだことを悔やむ里江は、清二郎の残した瓦版を撒くために仕業人たちに依頼する。
 仕業人たちはそんな命が幾つあっても足りない瓦版に係わり合いになって迷惑顔。みっともないくらいにうろたえ、知らぬ顔を決め込む。さすが仕業人。それだけに後半、あっさりと藤兵ヱとのけりをつけてしまうのが拍子抜けだが……
 つかまったお歌の始末を相談する主水とやいとや。そんな二人に「なんで殺す前に助けること考えねえんだ!」と抗議する捨三。それであっさり様子を見ることにする主水はあまり仕業人的じゃないかも。
 つるし上げられたお歌に、竹筒を渡してせめて水を飲ませようと、かいがいしい剣之介が実に仕業人。

[必殺] あんたこの女の性をどう思う

 必殺仕業人第二十三話。 DVD下巻
 やいとや又右衛門も入れ込む女郎・お絹はなぜか十日に一度しか出てこないという不思議な女。実はお絹は旗本千五百石・間部図書の妻女・雪。こっそりと屋敷を抜け出しては女郎として男に抱かれていた。
 そのことを知ったのは間部家中間の直助。岡場所で雪と会い、間部との間に夫婦の生活がないこと、身体のうずきをとめるためにこのようなことをしている事を打ち明け、口止めにと直助に抱かれる。
 お絹(=雪)に紐としてたかろうとする女衒・仙次郎と雪との諍いを見てしまった直助は、雪がこのようなことをするのも仙次郎のせいと思い、仕業人に仙次郎の始末を依頼する。そのことを意気揚々と直助は雪に打ち明けるが、帰って来たのは罵倒と叱責だった。淫蕩な雪は仙次郎とのそんな関係すら愉しんでいたのだ。意外な言葉に色を失う直助。
 一方、確かに仙次郎が悪辣な女衒とはいえ男女の仲のもつれで行う仕事には消極的な主水たち。捨三は直助に断りを入れに間部の屋敷に行くが、そこで見たのは口封じに、間部に射殺される直助だった。雪が女郎として働いているのは実は間部の承知の上でのこと。死に行く直助を前に、間部と雪は興奮して絡み合う。
 直助の最期を捨三から聞いた主水は間部と雪も仕置にかけることに。

 なんつーか、これはちょっと強烈。雪を心優しい奥方と思い込み勝手な理想像を作り上げ、一方的な思慕を暴走させたのは確かに直助だが、直助の死体を前に睦み合う間部夫婦は明らかに異常。雪の女の性も、間部の性癖異常も、直助の童貞臭い勝手な思慕も、なにもかもがつつみかくさず、見事なほどに異様に生臭い。
 雪の始末はやはり剣之介がつけ、解けた髪で絞殺されて髪を乱しながら崩れる最期の姿まで、全編艶っぽさで絵的に統一されている。話も画もタイトルに偽りなし。
 当初の標的の仙次郎もついでのように一緒に仕置。お歌にちょっかい出そうとしたり悪党なんだけど、今回ばかりは半ば以上とばっちり。

[必殺] あんたこの毒手をどう思う

 必殺仕業人第二十五話。 DVD下巻
 呉服問屋美濃屋の飯炊き婆さんのおのぶから、やいとや又右衛門は相談を受ける。番頭の彦三が最近矢場や廓へ足しげく通い、金遣いも荒いようだというのだ。しかし彦三は主人の太助の幼馴染で、その真面目な仕事ぶりに信頼も篤い。気にしすぎだろうと又右衛門はいなすが、妙に気になり捨三に彦三が通っているという矢場のことを調べてくれと頼む。
 しかし、数日もせずにおのぶが姿を消す。不吉なものを感じた又右衛門は、最近上がった身元不明の夜鷹の死体がおのぶではないかと考える。夜鷹はフグに当たって死んだ形跡があった。
 又右衛門の懸念どおり、ほどなくして川舟で鍋を食べた太助と彦三が、フグに当たる。彦三は助かるが、太助は命を落とす。自分が誘ったために、と泣いて悔しがる彦三だが、実は全て彼の計略だった。疑われないように自分は致死量以下しか口にせず、太助だけ死ぬように仕向けたのだ。太助には息子がいたが、まだ赤子で後を継ぐことは出来ない。そのため親族は太助の妻・おみちと彦三を一緒にして、成人するまで後見にしようと決定する。だがそれに強く反発するおみち。実はおみちは生前のおのぶから彦三の行動を聞かされており、彦三のお店乗っ取りの意図を薄々感づいていたのだ。又右衛門から懸念が全て当たっていたことを知らされたおみちは、彼に彦三を殺し太助の恨みを晴らしてくれと頼む。

 周到に周囲の信頼を得ておいた上での毒殺など、「あんたこの手口どう思う」よりはそれらしいお店乗っ取りだが、個性の強いキャラクターがいないので印象的にはむしろ弱い。このあたりはフォーマットでこなしてる印象の方が強いかも。ただ、彦三の徹底した裏表の使い分けぶりと、最初は夫同様に信じていた彦三をおのぶの言葉から段々疑いを強めていくおみちの描写は丁寧だ。
 赤子の横でおみちを犯す彦三など、彦三の悪辣さは結構出ているし、その愛人お咲のねちっこい嫉妬深さは仕置される説得力を生み出してるが、一緒に計画を手伝ったお咲の兄の仙八はさほど悪辣なシーンがクローズアップされなかったので、雑魚退治という印象が強い。江幡高志、なんかにくめないよなぁ。

[必殺] あんたこの心眼をどう思う

 必殺仕業人第二十六話。 DVD下巻
 中村家ではせんとりつがお盆も近いというので仏壇を掃除していた。しかしりつのうっかりから仏壇を壊してしまう。その矢先、丁度なじみの仏師・六兵衛が中村家を訪ねてくる。第六感でなにか御用がある気がした、という六兵衛の言葉に目を白黒させるせんとりつ。実は六兵衛には消えたものや見えないものを見通す不思議な力があるのだった。しかし六兵衛自身は奇異の目で見られるのを嫌い、そのことは極力隠していた。
 一方、若旦那の良太郎がいつまでも帰らないのを心配していた井筒屋に文が投げ込まれる。良太郎の身代金を要求する脅迫状だった。身代金の取引現場に向かった同心・浜田は指定した場所に現れた男・源七を首尾よく取り押さえるが、実は誘拐とは真っ赤な嘘。良太郎の失踪を知った源七が一儲けしようと嘘の脅迫状を投げ込んだだけで、源七自身は良太郎がどこにいるのかはまったく知らない。だが昇進のための上司への賂に金が欲しい浜田は、この計画を利用しようとする。偽の身代金要求をして自分が着服しようというのだ。
 しかし浜田のたくらみはあえなく挫かれる。実は井筒屋の奉公人・佐吉は六兵衛の娘・ぬいと恋仲。主人の為に六兵衛に良太郎の行方を見通してもらったところ、出来死体になって川べりに上がっている良太郎が見つかったのだ。良太郎は川遊びの最中、足を滑らせ溺死していた。
 悪事が皮算用と化した浜田だが失敗した悪事がばれるのではと不安になり、口封じに源七を始末し、そして不思議な力を持つという六兵衛も、その力を恐れて殺そうとする。
 そのことを予知した六兵衛は、主水の前に姿を現し、自分の身が狙われていることを告げる。六兵衛はその不思議な力で主水の裏稼業の事も見通していたのだ──

 珍しく超常現象がからんだ回。超常現象というと「うらごろし」が毎回出てたけど、今回は珍奇という感じはせず、ちゃんと上手く話の中で機能している。六兵衛は主水の裏稼業や自分が死ぬ事を知り、自分が死んだら主水に頼めとぬいに金を託す。裏稼業を知られたことを知り、始末するつもりで捨三に六兵衛を見晴らせるが、逆に浜田が六兵衛を始末するところを目撃する事に。主水はわけがわからないながらも六兵衛の言うとおりになったことから、依頼を受ける。
 浜田も巨悪ではないが、自己保身のためだけに疑心暗鬼になりあっさりと源七や六兵衛を殺すところは仕置の対象としての貫禄十分。
 また、吉田義夫演じる六兵衛の飄々とした演技も話に清涼感を与えている。

[必殺] あんたこの逆恨をどう思う

 必殺仕業人第二十七話。 DVD下巻
 主水はある晩、赤兎馬(せきとめ)組の捕り物に出食わす。赤兎馬組は神出鬼没な凶悪盗賊集団。しかし、頭目の孫・三蔵が傷ついて逃げそびれているのに出くわし、見逃してくれと頼まれる。金次第では考えないでもないというそぶりを見せる主水だが、横から現れた同心・岡田がさっさと三蔵をしょっ引いてしまった。
 三蔵は打ち首獄門になるが、その前に岡田と主水への怨嗟を吐き散らしていた。出戻り銀二や丁度不在の又右衛門からも赤兎馬組の意趣返しに気をつけるようにと忠告を受けるが、不安的中、岡田とその妻が何者かに殺されるという事件が起こる。
 次は自分と怯え、主水は上役に護衛を願い出るが牢屋見回り同心ごときに護衛などと、とてんで相手にされない。
 しかたなく剣之介や捨三に家の見張りを頼むが時遅く、西瓜売りの百姓に化けた赤兎馬組が中村家に押し入り、せんとりつを人質にとって主水の帰りを待ちわびていた──

 人様の恨みを晴らす主水が、今度は悪党の恨み(逆恨み)を買い、中村家に立て篭もられるという異色編。
 とにかくねちっこいくらいに中村家立て篭もりの経緯が描かれる。中村主水が狙われていると警告を受けた後、三蔵を召し取った岡田が家人もろとも殺される。岡田は西瓜に仕込まれた毒で、妻女は居間で複数の男に殺された上で殺されたと陰惨なことこの上ない。しかも主水が家に帰ると西瓜をバクついているせんとりつが……さすがに食欲が湧かず遠慮する主水だが、主水の分まで西瓜を食べたりつが腹を下し、りつの身体が無事である伏線にきちんとなっている。
 しかも西瓜はこの後もたびたび出て来て、夏の印象を濃くしている。
 西瓜売りや御用聞きのふりをして周囲に気付かれぬように中村家に押し込む赤兎馬組たち。しかも三蔵の母親のお駒は小塚っ原に晒された三蔵の首を中村家の仏壇に沿え、ほお擦りしたり髪を梳いたりと溺愛を通り過ぎたサイコぶり。なんとも不気味。千勢先生は法事から帰ってきたところを賊に拘束されるのだけど、塾にやってきた子供たちを帰した事で捨三が異変に感づくきっかけになる。
 主水の側は又右衛門不在の上、後手後手に回るが、なんだかんだと主水が心配で日が暮れだしてから中村家を見張りに行く剣之介。もっともちゃんと金はせびるのだけど。主水を気絶させて西瓜の大八車に乗せて連れて来るという赤兎馬組の企みを逆用、賊を仕留めていく。剣之介はお歌が一緒に行く意味がないんじゃない? と思ったけど、ちゃんと千勢先生を襲おうとした賊を仕留める際、目を隠して現場を見せないようにしてる。大出俊の契約の関係で出演しなかったやいとやはというと、なんと最後にちょっとだけ登場(ただし手だけ)。不在の理由が実は他のメンバーを出し抜いて赤兎馬組のお駒を標的とした仕事にかかっていたためと判明、主水たちの救出劇に乗じてちゃっかりお駒を仕留める。
 主水の意外なピンチで手に汗握るが、赤兎馬組も相手が悪かった。昼行灯としか調べられなかったのがやはりチョンボか。
 新人監督の採用で、しかも放送スケジュールの変更に伴い急遽追加された話だけど、急場に強い必殺スタッフの底力を見せ付けるような回。
 この回、赤兎馬組に狙われてることをもし知らせたら、とせんとりつの狼狽振りを想像するシーン、なんか見覚えがあるような……やっぱり仕業人みたことあったのかしらん?

[必殺] あんたこの結果をどう思う

 必殺仕業人第二十八話(最終回)。 DVD下巻
 標的の会津屋を待ちながら御籤を広げる又右衛門。そこには「凶」の一文字が。ゲンの悪さに御籤を投げ捨てる又右衛門だが、仕事は首尾よく会津屋を仕留める。しかし、この御籤が後々の災いの元に── 一方剣之介も会津屋が出入りする柴山藩江戸留守居役・土屋多聞を仕留めていた。
 捨三は依頼人の柴山の領民たちに会い首尾を伝えるが、料金を負けてくれと言われて呆れ顔。しかしその領民たちが江戸を抜けるのと入れ違いに、柴山藩から若侍とその妻が江戸へ駆けつける。
 二人は殺された多聞の婿・土屋小十郎と娘・澄。父が殺されたと知らされ、江戸屋敷に駆けつけたのだ。父が人格者と信じる二人はその死を嘆き、敵を探す。
 「これは商売人(プロ)の仕業だな」そう見抜いた小十郎は口入屋の江戸屋を訪ねる。江戸屋は江戸の黒社会に通じた男。会津屋の現場に落ちていた御籤を手がかりに、江戸屋の協力を得て下手人探しを行う。
 主水たちは大物の江戸屋が動いていることを知り不安にとらわれるが、その不安は的中、くじからやいとや又右衛門が絡んでいることがばれてしまった。
 一方、又右衛門の住居では剣之介がやいとをすえてもらっていた。今まで殺した人間の怨念が肩にのしかかってるようだ、と言う剣之介に 「くだらないねえ。殺す方も殺された方も、いずれは地獄で面つき合わせるんだ。そんときには一言頭下げて『すんませんでした』と言や、済むことじゃありませんか?」と嘯く又右衛門。そこを土屋と柴山藩士たちが急襲する。しかし又右衛門は逃げ、捕まったのは剣之介だった。留守居役殺しの依頼人と首謀者を吐かせようと、剣之介に柴山藩藩邸で苛烈な拷問が加えられる。
 そのことを知り、主水は会津屋殺しの詮議という名目で剣之介の身柄を町奉行所に移すよう工作するが、失敗。相談しあう仕業人たち。しかし、どうしようもあるはずもない。ピリピリした雰囲気の中でいがみ合いすら始まる。
 お歌にも万一の時の覚悟はしていてもらいたい、と言う主水。剣之介の運命はそう遠くない自分たちの姿でもあるのだ。
 しかし、お歌は一人で柴山藩藩邸に向かい剣之介を助けようとする。自分の代わりに剣之介が捕まった事の埋め合わせのつもりか、又右衛門もそれを手伝う。二人は剣之介を牢から出す事には成功したが、逃げる途中で見つかり、追っ手がかかる。又右衛門が身を呈して二人を逃がそうとするが、剣之介を庇おうと追っ手に包丁を向けたお歌が一刀の下に切り伏せられる。それを見た剣之介が逆上、追っ手の刀をもぎ取ると、二人、三人と次々に斬っていく。しかし拷問で弱った体の上多勢に無勢。又右衛門の見ている前でついに膾斬りにされ、力尽きる。
 主水も剣之介・お歌の最期を捨三から聞かされ、呆然とする。庭先でたたずんでいるのを間借り人の千勢先生から厠を除いていたと誤解され、非難と詰問を受けても上の空で二人の死にショックを受け続けていた。
 しかし柴山藩では、突如多聞殺しの追及の取りやめが藩主から命じられる。実は多聞は会津屋と組んで特産品の漆相場を操り不正に財を得、領民に塗炭の苦しみを与えていたのだ。このことが公儀に知れればただではすまないと、探索取りやめの決定が下った。
 父の不正を信じられず、そんなはずはない、と食い下がる澄だが、江戸家老からさらに多聞が女を囲っていて、不正で得た金をつぎ込んでいた事を知らされる。
 又右衛門もそのまま解放されるが、まるで小悪党のような又右衛門の捨て台詞を受ける小十郎に、澄が自害したという報が知らされる。尊敬していた父のもう一つの顔を知らされ、絶望した上での自害だった。
 義父と妻を失った小十郎は、江戸屋を通じて中村主水に決闘を申し込む。義父の非は明らかだが、それでも彼の気持ちと、武士としての面目からそうするしかなかったのだ。
 その事を聞き、仕業人が銭にならない決闘なんかするわけねえ、とせせら笑う又右衛門。しかし、主水はこの決闘を受けるつもりだと答える。剣之介・お歌を失った主水も、それ以外に決着をつける方法がなかったのだ。そして「侍ってのは理解できないねぇ」とからかうように嘯き、足抜けを宣言する又右衛門に、江戸屋から渡された証拠になった「御籤」を返すのだった。
 翌朝、ただ一人小十郎の待つ川原に、朝もやの中から姿を現す主水。又右衛門と捨三の見守る前で、侍・中村主水としての決闘が始まる──

 昔、ビデオで出ていた最終回シリーズを仕置人から仕事人までざらっと見たときに非常に印象に残った作品が三本あって、ひとつが「からくり人血風編」、ふたつ目がこの「仕業人」だったわけです。(最後の一本は「うらごろし」)
#実はコツコツ各話感想書いてたのも、この最終回の感想を書きたいがためだったりする。
 まったくカタルシスとは無縁の結末、しかしそこで描かれるのは彼らが底辺でうごめく「社会」そのもの。闇の世界を取り仕切る江戸屋源蔵と闇の世界のさらに最下層でうごめく仕業人たちの対称。仕業人は、対決するでもなく、ただその影に怯える。江戸屋も闇の掟をもって、仕業人たちとつかずはなれずの距離を取る。この底辺と社会を俯瞰する者の距離感、底辺の闇のもの同士でも蔑み恐れ合い、また藩士と町奉行所役人も「不浄役人」「田舎侍」と蔑みあう、闇と光両方の社会の広さの描写。仕掛人とはまた違った、泥の中で這いずり回るより惨めな者の視点だ。
 一方江戸屋や小十郎は明確な悪かと言えばそうではない。江戸屋は義理から探索に関わっただけで仕業人たちを決定的に追い詰めるのはむしろ消極的だし(まるでやぶれかぶれになった最底辺の者を恐れるかのように)、小十郎もむしろ陽の当たる側にいる人間で、義父の敵を果たそうと、己の使命に忠実なだけ。
 又右衛門のキャラクターも強烈だった。それまで知っていた殺し屋だけども結局はどこか正義の味方のキャラクターと違い、どう見ても完全なヒール。殺し屋稼業の業をせせらわらうような台詞、高いプライドと自己保身。まるで他の必殺のレギュラーキャラに「奇麗事言ってるんじゃないよ」と突きつけているようだった。
 そしてなんと言っても極めつけは剣之介夫婦の最期。犬死に──そうとしか言いようがない。水路の中を逃げ惑い、犬のように切り殺される。息絶える前にお互いを求めて手を伸ばすが、その手が重なり合うこともなく絶命する。この衝撃は主水にも影響を与え、「新必殺仕置人」いや、「必殺仕事人」でまでもその死に様に言及する。
 そして事態は急転、多聞の不正が明らかになり、彼らの犠牲がまったく意味のない事のように事態は収拾してしまう。なにも正しいことはない、正義はどこにもない……わかっていても小十郎は決着をつけずにはいられなかったし、主水もその果し合いに応じる以外に道はなかった。
 仕業人たちは闇のさらに奥底でうごめく住人だった。いずれその闇が自分たちを飲み込む事を承知で、それ以外の生き方ができない。結局土屋多聞の悪事とその始末をきっかけにそこから噴出した闇に、小十郎夫婦も剣之介夫婦も飲み込まれてしまったのだ。
 そして仕業人でも八丁堀同心でも誰でもなく、「中村主水」として全てに決着をつける主水。又右衛門が「恐ろしい男だ……」とつぶやくのは、善悪利害を越えたところにある生き様を見てしまったがゆえに漏らした言葉だろう。
 そこには勧善懲悪の爽快感はまったくない。善悪で括れる世界観ですらない。誰もが抱える闇、誰が立つ場所にも通じている淀み、その底辺でしか生きられない人間の業がそこにあった。