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時は現代、場所はかつての大英帝国の帝都、ロンドン。
全ては、ここから始まる…
少年は、ブレーキのかかったロードサイクルを右足で支える。顔を上げると、癖毛がかったくすんだオレンジ色のような金髪が跳ね上がる。
年の頃は17、8だろうが、表情のせいか年よりも子供っぽく見えた。
ティモシー、ティム。彼は普通の少年だった。
そう、運命の男との出会いがあるまでは…
一瞬闇の中に白い仮面が浮んでいるかと驚く。しかしそれは背後の闇に溶け込む様な黒いコートと、漆黒の髪の為異様に白い顔の色だけが映えている事がまもなく判った…
少年を死と狂気の戦いへと誘う超常世界への水先案内人、呪いの銃を振るう悪魔の魔術師。その名前は…
「お前、誰なんだ?」
少年が静かに尋ねる。不意に目の前に現れた闇に溶け込もうとするような黒ずくめの男に、若干の寒気を覚えた。
「俺に名はない」黒衣の男も静かに答えた。短く刈り込んだ男の黒い髪がかすかに震える。「ただ俺を呼ぶ時は、喪服羽織し死肉食らいの鳥の名を呼べ…」
『鴉』
「剣は不毛の荒野で」鴉は見つめるような目つきで宙を睨み何かにうなされるように詩を吟じはじめた。
「鎌は豊饒な畑で歌つた
剣は死の歌を歌つたが
鎌を降参させる事ができなかつた」(*)
急に目の前の敵の顔色が変わった。鴉の詩と共に、みるみるうちに剣が錆び、崩れていく。
呆然と見る鎧の男に鴉の狂ったような嘲笑が浴びせられた。
「ひゃははははははははははははははははは!!!!!!!!!」
* ウィリアム・ブレイク「剣は不毛の荒野で」
敵か味方か?ただその口は苦痛をくらい、魔術を吐き出すのみ。
「見ろ」鴉はケースの蓋を開けて、中をティムに見せた。中には古びた槍が一本、入っている。「これがお前の武器、俺の銃の他に奴等を殺せる唯一のものだ」
不死の敵。否が応もなく戦いに巻き込まれていく少年の運命。
目の前に、馬上の鎧の群が現れる。一瞬中世にタイムスリップしたかの様な錯覚を覚えた。闇の中で月光をくすんだ鎧の表面が不気味に反射している。彼らの乗馬の息遣いがすぐ近くにあった。
「良く見ておけ」その鴉と名乗る男は言った。「こいつらが俺達の敵だ」
闇に跋扈し、正義を唱えつつ虐殺を行うナイツ(騎士達)。彼らは人か?亡霊か?あるいはその目的は?
「我らの目的、それは我らが王の願いだ」
天井に垂直に立ったまま、騎士が言う。その手の槍の穂先にはほんの少し前まで、普通に歩き、笑っていただろうものが刺さり、本来の重力にひかれ、下にずり落ちようとしていた。ただ呆然と見るしかないティムの頬に、赤い滴りが落ちた。
正義はどこにあるのか?天に地に、全ての遣る瀬無き人々の悲鳴が木霊する!
「ぎゃはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
鴉はけたたましい笑い声をあげながら群集に向って銃を撃ちまくる。群集を盾にしようとした騎士ごと、銃弾が人々を貫いていく。目の前は阿鼻叫喚の地獄と化した。
何者をも信じず、全てを蹴散らし進もうとする鴉の目的は!?
ティムは悲鳴を上げた。
「やめろ!!」ティムは止めようとするが、鴉の持つ銃の銃床が容赦なくその鼻先を襲う。
何故戦うのか!?
「奴等は月光の下の世界の住人、バックリット・バイ・ザ・ムーンだ」
鴉が言った。
夢魔の存在、BACKLIT BY THE MOONとは!?
戦う事の意味は!?
今、夜の奥底から広がる闇の中で、正義無き狂気の戦いが始まる!!
"Backlit By the Moon"
or A fairy tale never told
全てはそこから始まる…
BGM:"WAITING FOR THE WHEEL TO TURN" in Album"Get Out" by Capercaillie.
但し予定は未定。